今度は集約化がやり玉に?
産科医不足で休診の危機に
県立志摩病院地方都市の中核病院の勤務医不足が全国的に深刻化する中、医師を基幹病院に集める「集約化」によって、県立志摩病院(志摩市阿児町)の産婦人科が休診の危機にひんしている。志摩市内にはほかに産婦人科のある病院や産院がなく、同病院や市は「市内で出産ができなくなるおそれがある」と危機感を募らせている。 (小柳津心介)
「産婦人科をなくすことは、「志摩の人は子供を生まなくてもいい」と言うようなもの。地域差別以外の何ものでもない」
産婦人科の存続を一貫して主張する志摩病院の田川新生(しんせい)院長は、憤りを隠さない。
県や三重大病院などの代表者で構成する県産婦人科医療再生検討委員会は今年二月、勤務医不足対策として、伊勢志摩地域を六人の医師でカバーすることを決定。三重大病院が志摩病院に派遣している二人をゼロにし、山田赤十字病院(伊勢市御薗町)を現在の四人から六人とする集約化を目指しているが、志摩病院などの反対があり結論には至っていない。
志摩市の年間出生数は約四百人で、そのうち約三割が志摩病院での出産。産婦人科が休診になった場合、伊勢市など市外で出産するしかなく、志摩半島の先端の志摩町御座からだと、志摩病院なら車で三十-四十分だが、伊勢市内だと約一時間半もかかることになる。
田川院長は「医師不足という現実はいかんともしがたく、集約化も仕方ないが、地形や交通面の問題を無視して『伊勢・志摩』を一つとする区域分けは間違っている。命が平等に扱われていない」と指摘する。
こうした状況に、志摩市は四月七日付で、産婦人科医の確保を求める要望書を三重大病院などに提出。「安全、安心なお産ができる環境をぜひ残してほしい」と訴えた。
これに対し、三重大病院は同二十日付で回答。二〇〇四年に七十一人いた県内の産婦人科の勤務医が、今年四月には五十四人まで減少したことを挙げ、「大学や基幹病院の医師数を削減して地域に再配分するという対応策は限界に達している」「病院間の集約化を推進する以外に対応できない」と厳しい見方を示した。
四月に志摩病院で一人目の女児を出産した志摩市内の女性(24)は「最初は伊勢市の個人病院に通っていたが、片道約一時間もかかるので志摩病院に変えた。陣痛が始まってから伊勢まで行くなんて、絶対に無理」と話す。「二人目はまだ考えていないが、産むなら知っている先生や看護師さんがいる病院の方がいい。志摩病院なら小児科もあって産後も安心なのに、なくなってしまったら…」
安心して子供を産める場所は守られるのか。田川院長は「この現状を地域の人たちにも知ってもらい、声を上げたり考えたりしてもらうことが必要だ」と話している。
集約化を進めようとすると、地域差別と受け取られてしまったり。
難しいですね。
その一方、産婦人科医が1人しかいない病院で、産婦人科医が対応できずに胎児死亡となってしまった件(続きのほうにコピぺ)では、病院の対応が足りないということになる。こちらの方は患者さん、赤ちゃん、産科医内科医の皆が気の毒としか言いようが無いですが・・・
どうすれば良いのか、みんな頭を抱えてしまっているというのが現状なのでしょうかねえ。
岐阜県内の30歳代の女性は妊娠9カ月だった04年7月の未明、激しい腹痛で近くの2次救急病院を受診した。胃薬をもらって帰宅した後、苦痛が続き、再度病院に連絡した。だが看護師は「内科医しかいない」と朝の受診を勧めた。女性は死産し、「当たり前の対応をしてほしかった」と訴える。一方、院長は「産婦人科医は1人だけで、これ以上できない。救急をやめたいくらいだが、使命感で続けている」と言う。医師不足に苦しむ2次病院の実情が浮かぶ。
看護経過記録や女性によると、女性は午前2時ごろ、総合病院の救急外来を頼った。地元で最も大きな病院で、妊婦健診も受けていた。当直の内科医は女性に「胃だね」と告げた。女性が「子供は大丈夫ですか」と尋ねると、内科医は「分からないね」と答え、飲み薬を渡して帰宅を促した。
自宅で薬を吐き、午前3時ごろに夫が病院に電話したが、看護師は「内科医しかおらず、今できることはない。変わったことがあれば連絡を」。同6時ごろには、出血や腹痛があると連絡したが、看護師は「朝一番で産婦人科外来にかかって下さい」と答えた。
さらに症状が悪化し、夫の運転で病院に駆け込んだ。駆けつけた産婦人科医が午前7時40分ごろに診察。「胎盤がはがれかかっている」と言い、救命救急センターのある病院への搬送を手配した。女性は救急車内で出産したが、既に子供は死亡していた。子供は男の子で、名前も決めていた。
女性は3度、病院と話し合い、「看護師が医師の指示も受けずに患者に指示しないでほしい」「医師が足りなければ増やし、救急対応できる体制を整えて」と指摘した。病院は「お気の毒だったとは思うが、限られた体制でベストを尽くした。『体制を十分にして』といわれても、物理的にできない。どれだけ大学に医師を送ってくれと言ったかわからない」などと窮状を訴えたという。
日本産科婦人科学会の調査(05年7月)によると、大学病院から産婦人科医の派遣を受け分べんを扱う全国927病院のうち、産婦人科医1人の病院は132病院に上る。院長は取材に「助産師も辞めてしまい、4月以降は新規の妊婦を受け入れられないほどだ」と話している。【渡辺暖】
毎日新聞 2006年5月7日 3時00分