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2006年10月27日

命を軽んじるはずなんて無いです。

奈良の産婦死亡事件は、かなり多くの波紋を呼んでいる模様です。
テレビや新聞でもちょくちょく報道されていて、それを見るたびに抑うつ状態になってしまう毎日を送っております。
特に、いろんな所で取り上げられているけど産経新聞の社説日刊スポーツの記事は、かなりキました・・・。
ああ、自分たちはこういう風に思われて居るんだと。

一貫した考え方として、「医者がダメだから、命を重く見ていないから、受け入れ病院も見つからず、患者さんが亡くなったんだ」というのがあるみたいです。

命の大切さを感じていない医者なんて居ませんよ・・・。
それどころか、毎日、命の重圧に押しつぶされそうな気持ちですよ。
医者になってから、命に関わる仕事をしているという責任の重みは、日々増すばかりです。
本当は、もう逃げ出したい。もっと有能な人に変わって貰いたい。でも目の前の患者さんを置いて逃げ出すわけにも行かず、代わりもなかなか居ないから、何とか続けている状態です。
そう思っている人は多いんじゃないかな・・・ そして実際に辞めてしまう人も・・・。

10月からドラマ「Dr.コトー診療所2006」が始まりましたね。その主題歌「銀の龍の背に乗って」は、こんなフレーズで始まります。

>あの蒼ざめた海の彼方で 今まさに誰かが傷んでいる
>まだ飛べない雛たちみたいに 僕はこの非力を嘆いている

余程のスーパードクターでない限り、自分の非力がもどかしいと思っていると思います。
「命を軽視している」みたいに、軽々しく言って欲しくない。

■【主張】病院たらい回し 患者本位の基本忘れるな

 分娩(ぶんべん)中に意識不明に陥った妊婦が、19カ所もの病院に次々と転院を断られ、やっと収容された病院で脳内出血と帝王切開の緊急手術を受け、男児を出産した。だが、8日後に亡くなってしまう。問題は病院の「たらい回し」である。

 残された夫は「妻の命をもっと大切にしてほしかった」「今後、同じことが起きないよう妊婦の搬送システムを改善してほしい」と訴えている。

 妊婦は8月7日、奈良県大淀町立大淀病院に入院し、翌日午前0時過ぎ、頭痛を訴えて意識を失った。適切な処置ができないと判断した大淀病院は受け入れ先を探したが、満床や専門医不在を理由に断られ、6時間後、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に運び込まれた。受け入れを打診した20カ所目の病院だった。

 患者を医療設備と専門スタッフのそろった病院に搬送するシステムの欠如がまず問題だ。

 奈良県では高度な医療や緊急治療の必要な妊婦の40%近くが県外に転送されている。厚生労働省が進めているお産を扱う周産期医療をネットワーク化するシステムの導入も他の自治体に比べ、遅れたままだ。

 重体の患者を引き受け、面倒な医療訴訟を起こされる事態を避けたがる受け入れ側の病院の体質もあるだろう。厚労省によると、周産期医療は訴訟が多く、医療ミスや医療事故の12%は、産婦人科医が当事者だという。

 妊婦が最初に入院した大淀病院の誤診の問題も、忘れてはならない。大淀病院は容体の急変後、妊娠中毒症の妊婦が分娩中に痙攣(けいれん)を引き起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、痙攣を抑える薬を投与した。当直医が脳の異常の可能性を指摘し、CT(コンピューター断層撮影法)の必要性を主張したが、受け入れられなかった。

 脳内出血と正確に診断されていれば、搬送先の幅が広がり、早く受け入れ先が決まっていた可能性は高い。

 奈良県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査に乗り出した。

 患者を救うのが、病院や医師の義務である。患者中心の医療の基本を忘れているから患者をたらい回しにし、患者不在となる。

 もう一度、医療とは何かをしっかり、考えてほしい。


命を救ってこそ病院:井上真

 命にかかわる緊急事態で医師の治療が切迫しているのに、受け入れ病院が決まらず焦る。誰でもいいからすがり付きたい。わらにもすがる思いだ。

 今年8月、奈良県大淀町の町立大淀病院で出産中の妊婦が意識不明の重体になった。受け入れ先の病院を探すも、18病院に「満床」を理由に拒否され、妊婦の高崎実香さん(32)は19カ所目の病院で脳内出血と診断された。緊急手術で男児出産も約1週間後に死亡。意識を失ってから処置を受けるまで6時間かかった。

 激しい怒りが込み上げる。拒否した病院の無責任さ、受け入れ先を見つけられず手間取った病院の無能ぶりに対してだ。該当する18病院は高崎さんの死をどう受け止めるのか。「我々以外の17病院も拒否した。責任は18分の1だ」とでも言うのか。「18病院もが受け入れできなかったのだから致し方ない。非常に残念です」。そんな空々しいコメントが容易に想像できる。

 後日、実は新生児集中治療室(NICU)が満床ではなかった病院の存在が明らかになった。その病院は切迫早産で入院中の妊婦のためベッド確保の必要があった、と説明している。理由はあるだろう、いくらでも。後から探せば何とでも言える。できない理由など100でも1000でも探せる。

 難しくても急を要する患者を、厳しい条件下で受け入れ、でき得る限りの治療を施すのが医療人の使命であり義務だ。時間的余裕もあり誰でも治せて、助かる確率が高い患者だけを選んでいるのか? 18病院が受け入れの姿勢を見せていれば、助かる確率は19番目の病院到着時よりも高かった。その事実をどう思うか。

 以前、家族が意識を失い救急車で搬送された。付き添った救急車の中で驚いた。受け入れ先が見つからない。1時間は待っただろう、家の前で。救急車は停車したままだ。隊員は困った表情で「ベッドがいっぱいで入院はできないそうです。どうしますか?」と、1病院ごとにこちらに判断を求めてきた。

 精神的なゆとりはわずかにあったが、緊急搬送の実態を知って焦りは倍増した。「ベッドがどうかは気にしないでください。まず治療を受けられる病院に、それも一番近いところに運んでください」と伝えて、ようやく走りだした。

 信号を無視して突っ走る救急車に乗りながら、ものすごく矛盾を感じた。「ここで急ぐことよりも、もっと根本のところが間違っている」。

 18病院は大淀病院がどの順番で打診したかを知りたがるだろう。そして、早くに打診された病院は「我々に打診された時はまだ重篤ではなかったはず」と言い逃れ、最後の方の病院は「自分たちよりも前に打診された病院の責任が重い」と主張するだろう。

 高崎さんが亡くなり、これだけずさんな実態があらわになった。死に至らないケースはもっとある。とても人を助けるどころじゃない。命を救うのが病院ではないのか。命を見捨てた18の病院に言いたい。恥を知れ。

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コメント

また出たーって感じでしょうか?
あまりにもひどいのでTBさせていただきました。

こんにちは
mariko先生

この記事は酷いっすね。酷すぎるので私も記事を立ててしまいました。

はじめまして。
産婦人科Drのブログをさまよってこちらにたどり着きました。
私の父も産婦人科医です。
30年間、目の前の尊い命達に向き合ってきました。悔しさに、切なさに立ちすくむ姿を見たこともあります。
私はそんな父を、父の仕事を誇りに思っています。
mariko先生、応援しています。

>yuchan先生、いなか小児科医先生
本当にひどいですよね。
ひとの心に土足で踏み込むような文章・・・。
読まなければ良かったです。

>miyabiさん
コメントありがとうございます。
お父様は立派に頑張られたのですね。
私もなんとかもうちょっとだけ頑張ります・・・。