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2005年4月 1日

どうしても医師の方に同情してしまう。

大野病院医療ミス:無理な処置で大量出血、医師不足も死亡原因に--県事故調 /福島

 大熊町下野上の県立大野病院(作山洋三院長)で帝王切開の手術中に妊婦が亡くなった医療ミスで、県の事故調査委員会(委員長、宗像正寛・県立三春病院診療部長)は30日の会見で、無理な処置が大量出血を招き、医師不足も死亡の原因になったと結論づけた。【岩佐淳士】
 ◇県「誠意持ち遺族に対応」
 調査報告によると、妊婦は胎盤が子宮内部の筋肉にくっつく癒着胎盤の状態だったため、執刀医は胎盤を子宮から手ではがし切れず、手術用のはさみではがした。
 その間に約5000ミリリットルの出血があり、止血や輸血をしたが間に合わず、心室性不整脈を起こして死亡した。出血は無理に胎盤をはがしたためで、すぐに子宮摘出すべきだったという。さらに、医師不足で、医師の応援や輸血体制が十分でなかったことも要因とした。
 宗像委員長によると、癒着胎盤は2000~4000人に1例程度。はさみで胎盤をはがす方法は通常あり得ないといい、「胎盤の剥離(はくり)が難しい時点でやめていれば助かる可能性は高かった」と指摘している。
 手術は執刀医(産婦人科専門医)と助手(外科医)、麻酔医(麻酔科専門医)と看護師数人で行われた。執刀医は、30代の男性で産婦人科の専門医として、9年目。
 記者会見で県病院局の秋山時夫局長は「今後事故防止に努め、遺族に対して誠意を持って対応したい」と述べ、作山院長とともに頭を下げた。

いろいろな意味で身につまされるニュースがありました。
殆どの人が、これを読んで、「医療ミスで死ぬなんてひどい話だ」と思われるのでしょうね。でも私はどうしても、処置を行った産科医に同情してしまいます。

確かにひどい癒着胎盤に対して、帝王切開中にハサミで無理に剥離するのは、普通はやらない処置ではあるでしょう。
でも、この医師は、(私の想像も入ってるけど)この病院にたったひとりの産科医なんです。まだ9年目なのに、一人で医長をしていて、24時間常に産婦人科の救急に対応し、帝王切開は外科の先生にお願いして一緒にやって貰わなければならない状態です。
手術中に、何か困ったことがあっても、簡単に相談する相手が居ないんです。
「子宮摘出をすれば助かった」というけれど、帝王切開をする患者さんの子宮を取るというのは、結構たいへんな選択です。それこそ、もし後で考えて子宮を取らなくても良かったということになったら、そのことで訴えられることだって十分考えられるし、そもそも帝王切開される患者さんや家族は子宮を取られるなんて(たとえ説明してあっても)夢にも思っていませんし。

どんなにベテランの医師だって、手術の時には結構いろいろな事を助手に確認し、それで安心を得ているものだと思うんです。
それなのにたった一人で常に外科の先生相手に手術する・・・自分がそうだったらと思うと、もう居てもたっても居られないです。
記事の中にあるような、医師の不足が、本当の問題点だと思うのですけど。

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コメント

こんばんは
marikoさま

大分の片田舎で一人小児科医長をしているものです。このニュースは本当に悲しいニュースでした。この、執刀医の先生は年間200から300の分娩と帝切20から30例をこなしていたと聞きます。

地域のため、身を粉にして働いて、最後には、この扱いとは...検察の横暴としか受け取れません。

何とか早期に釈放されて、真実が明らかになる事を祈っております。