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2006年12月30日

首都圏にも産科崩壊の波

「お産ピンチ」首都圏でも 中核病院縮小相次ぐ
2006年12月30日06時10分

 東京都心の都立病院などが、お産を扱うのを休止したり、縮小したりしている。それも、生命が危険な出産前の母と胎児の治療から、出生直後の新生児の治療までを一貫して担う「周産期母子医療センター」で目立つ。大学病院の医師引きあげなど地方で深刻化していた問題が、ついに都心にまで波及してきた形だ。病院も医師も多く、埼玉や千葉などからも患者が集まる東京。中核病院のお産縮小の影響は、首都圏に及びそうだ。

 都立豊島病院(板橋区)は9月から、お産を全面休止している。

 同病院は、新生児集中治療室(NICU)6床を備えた地域の周産期センターで、年約900件のお産を扱ってきた。しかし現在は、他の病院から搬送されてくる低出生体重児などをNICUで受け入れているだけだ。

 定員6人の常勤医師が今夏、2人に減少。「非常勤を含めても当直などが満足にできない状態になった」(都病院経営本部)という。

 都立墨東病院(墨田区)の産科は11月から、新たな患者や、予約がない外来診療を受けず、年間1000件以上あったお産を縮小している。

 12床のNICUがある同病院の総合周産期センターは、いわばお産の救命救急センター。だが、常勤医は定員9人に対して5人。「周産期センターとしての役割にマンパワーをあてた」(同本部)結果、外来を縮小せざるをえなくなった。

 大田区の荏原病院(都から東京都保健医療公社に移管)も、1月から産婦人科の常勤医を減らし、お産を縮小するという。東京逓信病院(千代田区)も28日、産科の診療とお産を休止した。

 影響は周辺の病院に及んでいる。豊島病院から約1キロの距離にある日大板橋病院。豊島病院がお産を休止した翌10月には、それまで月70件ほどだったお産が100件近くに急増した。

 日大病院も総合周産期センターに認定され、ハイリスク出産も多い。救急搬送されてくる妊婦を年に80~100人受け入れているが、その倍以上を断っているという。

 「このまま出産数が増えるとハイリスク出産は受けられなくなり、周産期センターとしての責任が果たせない。通常のお産は、受け入れを制限する必要が出てくるかもしれない」という。

 東京は、埼玉や千葉、神奈川の妊婦の「受け皿」でもある。特に出産費用が約30万円と安い都立病院は人気で、埼玉と都心を結ぶ東武東上線沿線の豊島病院には、埼玉から来る人も多かった。

 埼玉県の医師1人あたりの「出産扱い件数」(出生届数を産婦人科医数で割った数)は昨年、全国最多。総合周産期センターは県内に1カ所だ。そのセンターを運営する埼玉医大総合医療センターの関博之教授によると、救急患者の受け入れは、依頼の4~5割ほどという。

 「東京の病院で引き受けてくれる数が減ってきて、限界のところでやっている」と話す。

崩壊の波が都内まで・・・という記事なんですけど。

先日、医療界とは全然関係ない人と話をしたときに思ったこと。
「産科が減っていると言うけど、堀病院みたいにいっぱいお産をするところに取られてるんじゃない? ほら最近少子化だから。」
と言った方がいました。
産科が減っている原因を少子化による経営困難かなんかだと思っているみたい・・・。

また別の人。こちらはかのF県在住の方。
「産科が減ってるってテレビでやってたけど、うちのあたりはまだ選択肢あるし、減ってる感じしないねー。」
それは選択肢の病院が無理して頑張ってるからだと思うのですが・・・。

結局自分が困らないと分からないという人は多いのだろうと思う。
やっぱり崩壊してしまうのかもしれない。
記事に出てくる病院はあちこちで産科医を募集してるけど、待遇よりも使命感に訴えるものばかりですし・・・。

2006年12月29日

英語版のだめ

いつもお世話になっているshy1221さんのブログを読んでいて、
「ほぉ~、アメリカでは英語版ののだめを売っているのか。それは英語学習に役立ちそうだな~」
と思っていた(初心者レベルなもんで)ら、
普通に日本の本屋で売ってましたよ。英語学習のコーナーにね。

とりあえず一番好きな5巻(のだめがラフマニノフで覚醒するところです)を買ってきました。1517円。
何度も読めば元が取れますかね・・・。

と思ったら、amazonでは1178円で売ってました。巻によって値段が違うのは何故?

Nodame Cantabile 5 (Nodame Cantabile)

2006年12月26日

2006年のクリスマス

我が家もクリスマスしましたよ。
今年のケーキは、IL PINOLO で購入したチョコレートケーキ。
チョコムースとキャラメルがチョコでコーティングされた感じ。美味しいんだけど、す・ご・く、甘かったです。

あとは、ダイニングプラス(すっかりお気に入りになりました)でお取り寄せした、イベリコのハンバーグ。
これは美味しかった。デミグラスソースと岩塩がついてくるんだけど、岩塩のみでいただくと味わい深くてしっかりしたお味に。あと1つ残っているので、夫に内緒で食べようっと。

2006年12月22日

奈良・大淀病院分娩中止

奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える

2006年12月22日

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、重体になった妊婦(当時32)が計19病院に搬送の受け入れを断られた末、大阪府内の病院で死亡した問題で、同病院が来年3月で分娩(ぶんべん)の取り扱いを中止することがわかった。同病院の産婦人科にはこの妊婦を担当した常勤の男性医師(59)しかおらず、長年にわたる激務や妊婦死亡をめぐる対応で心労が重なったほか、別の産科医確保の見通しが立たないことなどが理由とみられる。

 県などによると、同病院は来年3月末で分娩対応を中止し、その後は婦人科外来のみ続ける方針。スタッフの拡充を検討したが、県内の公立病院に産科医を派遣してきた奈良県立医大が医師不足に陥っていることなどから、新たに医師が確保できず、分娩継続ができないと判断した。

 この男性医師は、県立医大から非常勤の医師の応援を得ながら、年間150件以上のお産を扱っていた。宿直勤務は週3回以上で、妊婦が死亡した後、「この病院で20年以上頑張ってきたが、精神的にも体力的にも限界」と周囲に漏らしていたという。

 県南部では、県立五條病院(五條市)が4月に産科医不足から分娩取り扱いを中止しており、大淀病院がお産を扱う唯一の病院だった。県幹部は「早急に県内の周産期医療のあり方を見直さねばならない」と話す。


私たちから見たら「そりゃ辞めるでしょう」だけれど、一般の方々の目には「なんて責任感のない!」と写るのかも知れません。
でもね、本当に今までみんな無理してたんですよ・・・。
表には出せないネタは数え切れないほどあります、崩壊は急速に進んでいますよ。

2006年12月21日

もう少し自分の与える影響を考えて欲しい。

だいぶ間が空いてしまいましたが。
先日の「カスペ!」。腹立つだろうな~と思いつつも見て、やっぱり腹を立ててました。産科の部分は我慢して見たけど、それ以外はとても見る気になれませんでしたよ。

というわけで他科の部分でどんな話が出ていたかは知らないですけど、産科については「陣痛促進剤による胎児死亡事例」を取り上げてました。
細かいことは忘れたけど、破水か何かで入院した妊婦さんが、「子宮口を柔らかくする薬です」と陣痛促進剤の飲み薬(PGE2と思われる)を渡され、その後しばらく放置され、看護師が心音を確認に来たときには赤ちゃんの心拍が遅くなっており、緊急帝王切開したけれど赤ちゃんは助からなかった、というものだったと思います。
それに続くデータとして、「曜日別分娩数」を提示し、「平日に分娩が集中しているのは医者の都合だ!」という流れ。
覆面の医師(ニセ医者にしか見えないけど)が「自分も休日に休むために平日に促進したりしますよ」という話をする。

これを見た一般の方達が思うことは、
「陣痛促進剤は医者の都合で使う物。使うと赤ちゃんが死ぬ。」
でしょうねぇ。

実際、今週に入って、過期妊娠で陣痛促進をすすめた妊婦さん2人に、促進剤の使用を断られました。「促進剤を使うくらいなら、帝王切開にして下さい」と言われました。
帝王切開にもリスクはある、と言う話をしてもダメ。「とにかく促進剤だけはイヤです」の一点張りです。

テレビで提示された事例で問題なのは、本当は「促進剤の使用方法」であって、促進剤そのものでは無いのに。
促進剤を使うことで助かった人たちもたくさん居るのに。
促進剤を使わないでやみくもに帝王切開をやりまくった結果、合併症が激増したら、テレビは何か責任を取ってくれるのでしょうかね?
帝王切開の最も重大な合併症は肺塞栓です。発症したら、どんなに医療設備の整った病院でも母体死亡を招く可能性があります。

2006年12月12日

ヒューマン2.0

尊敬するアルファブロガーさんの一人である、渡辺千賀さんが本を出版されました。
ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)

さっそく読んでみました。
シリコンバレーでの生き方とか仕事とかそういうことが書いてあって、シリコンバレーで一発やってみようと言う方は読むと得するかも知れません。

昨日は代官山で出版記念パーティがあったそうで、行った人に聞いたところかなり盛況だったもよう。
ちょっと行ってみたかったな。

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)

2006年12月10日

ブルー セラドン@二子玉川

玉川高島屋SC南館8Fに、タイ料理屋さんがオープンしたというので、早速ランチに行きましたよ!
いや正確にはたまたま年賀状を取りに行ったら出来ていたので、入ってみたんですが。

ブルー セラドン(リンクはそのうち切れちゃうかも)という名前だそうな。日曜でしたが、ほとんど並ばずに入れました。
ランチメニューは5種類あり、すべてサラダ、スープ、そしてビュッフェ付き。
ビュッフェはパッタイ、タケノコの炒め物、グリーンカレーなど数種類のおかずに、デザートもケーキとタピオカがありました。
ビュッフェの味はまあまあでしたよ。

写真はランチメニューの牛肉の極細麺と、地鶏ひき肉のバジル炒めのせごはん。
こちらは若干上品な味で、辛めのビュッフェメニューにちょっと負けている感じがしました。

タイ料理好きなので、また行くかも。

ブルー セラドン 玉川高島屋店
玉川高島屋S.C. 8F
TEL 03-5797-5565

2006年12月 9日

よしなり@銀座でコラーゲンたっぷり鍋

お友達と銀座で鶏鍋をつつく、という嬉しい機会に恵まれました。
お店は「よしなり」。えーと今HP見たら串焼きの店だったんですね。周りのテーブルもみーんな鍋を食べてたから気づかなかったわ(笑)。

こぢんまりとした店内は、女性客でいっぱいでした。男性客はカップルに1人だけだったかな?
私たちも女性チーム。
で、メインはこの地鶏鍋です。

写真には鶏が写ってません。その代わりに何かゼリー状の物体で満たされているような・・・
これがコラーゲンたっぷりの煮こごり。火にかけると少しずつ溶けてゆき、美味しいスープになるのです。
いやホント美味しかったです。

お取り寄せも出来るようなので(たぶんここで)、家でも食べちゃおうかな~と考え中です。

よしなり
東京都中央区銀座8-10-7東成ビルB1
TEL 03-5537-1566
[map:東京都中央区銀座8-10-7:N]

産科をやめる理由

こちら、各所で話題になり始めているようですが。
あまりにも正直な意見が書かれていてびっくりしました。

 当院は、2000年の開院から、「産科のオーク」として多くの妊産婦様のご支持をいただいて来ました。しかし残念ながら、2007年3月末をもって、分娩の取り扱いを終了することになりました。これには、次の理由があります。

1. 厚生労働省看護課長通知によって、看護師による分娩時の内診が禁止されたこと。
2. 信頼関係のある患者様ばかりではなくなっていること。
3. 産科医療のシステムが破綻しつつあること。

これ以降の文章もなかなか興味深いので、まだの方は是非ご一読を。続きのほうに全文コピペ。

分娩取り扱い終了のご案内

 当院は、2000年の開院から、「産科のオーク」として多くの妊産婦様のご支持をいただいて来ました。しかし残念ながら、2007年3月末をもって、分娩の取り扱いを終了することになりました。これには、次の理由があります。

1. 厚生労働省看護課長通知によって、看護師による分娩時の内診が禁止されたこと。
2. 信頼関係のある患者様ばかりではなくなっていること。
3. 産科医療のシステムが破綻しつつあること。

1.  日本中の多くの産科施設において、数十年も前から分娩時の内診は産科医の指示によって看護師が行ってきました。法文に明白な規定がないものの、当然に合法の診療行為とされてきました。しかし、平成16年になって、厚生労働省は突然「看護師による内診を禁止する」という通達を出しました。あまりに実状とかけ離れた通達であり、関係団体が再三にわたり撤回を申し入れたにもかかわらず、行政は指導を強行し、刑事事件にまでなっています。


2.  私どもは、プライベートのクリニックであり、信頼関係の築ける方においで頂きたいと考えています。私ども医師も看護師も、生身の人間です。失敗もしますし、もっと知識や技術を持つ医師や看護師が、他の病医院に大勢おられます。誠意を尽くし、全力を尽くすことだけが、私どもが患者様にお約束できる、唯一のことです。

 しかし、本当なら「よくしてくれた」と言われこそすれ、クレームを受けるいわれがない場合でさえ、「納得いかないから説明せよ」と激しい非難を受けることがあります。以前は、このようなケースは稀でしたが、最近、急増しています。近隣の病医院が産科を閉鎖していく中、仕方なく私どもを受診される方が増えているためだと思います。しかし、このままでは、当院も防衛的対策をとらざるを得ず、私どもの考える、信頼関係を前提とした安全な産科診療のスタイルを続けることが、困難になってきました。


3.  さらに深刻なことは産科医療のシステムが崩壊しつつあることです。ご存知のとおり、産科医、小児科医の不足で、緊急時の受け入れ先がなくなろうとしています。ここ半年ほどで、緊急搬送の受け入れを次々と拒否され、いくつもの病院に連絡をとらなければならないことが増えています。

 


  信頼を置いていただいているわけではない方に、何か起これば、刑事、行政罰の科せられる違法状態に置かれたまま、医学的リスクが更に高まっている産科の診療を続けることは、私どもにはできません。

 当院が分娩をやめることで、産科医療システムの崩壊が一層進むことになるかもしれません。しかし、医療機関へのあまりに理不尽な批判、制裁が相次ぐ中、私どもにはこれ以上の努力を続けることができず、苦渋の選択をしました。これまで、当院をご支援いただいてきた皆様には、誠に申し訳ございませんが、ご理解のほどをよろしくお願いします。

 今後、従来からのもう一つの専門分野である不妊治療、特に体外受精、顕微授精に、一層の力を入れることになります。培養ラボラトリーの拡張と設備、人員の増強を行い、体外受精センターを拡充します。入院設備を有することで、切迫流産や不育症の入院治療に対応が可能です。

 また、不妊症の大きな原因となる子宮筋腫や卵巣のう腫などの手術治療には、サージセンター(手術センター)を設置し、さらに積極的に取り組んでいく予定です。

 全身管理のできる重装備の設備と、充実のアメニティを生かし、オーク住吉産婦人科は、高度不妊治療センターとして生まれ変わります。皆様のご理解とご支援を賜りますようにお願い申し上げます。

 もちろん、ご予約の皆様につきましては、最後まで責任をもって診療させていただきます。ただ、上記の点をくれぐれもご理解いただいた上で、当院をお選びいただきますように、お願い申し上げます。予定日超過2週間までは、分娩誘発を行わず自然に経過をみるため、分娩のご予約をお受けできるのは、予定日が3月15日までの患者様となります。

 最後のお一人が無事にご出産を終えられるまで、現在の態勢を維持し、職員一同、全力を尽くす所存ですので、このまま当院でご出産予定の皆様も、どうぞご安心下さい。

医療法人オーク会
オーク住吉産婦人科
院長 中村 嘉孝

スキーが再び流行る日が来るかな?

えー、一応私の趣味として「スキー」というのがあります。超下手、というかそれ以前に長い板はもう何年も履いてませんが・・・。でもスキー場には年何回かは行く。スキー場に行かなくても、「私をスキーに連れてって」は一年に一回は見る(笑)。
で、最近思うのは、スキー産業の衰退ですよ。著しいです。去年から今年にかけて、いくつのスキー場がクローズになったことか。そのうち全くなくなってしまうのではないかと思うほど。
それ以前に、スキー場に行ってもスキーヤーあんまり居ないし(スノーボーダーが多い)。

そんな中、スキーを扱った映画が出来るというニュース。

「海猿」チームがモーグル映画製作

 興行収入70億円を超える今年の実写映画最大のヒット作「LIMIT OF LOVE 海猿」の製作チームが、新作「銀色のシーズン」を手掛けることが8日、分かった。スキーのモーグルを通して人生の再生、友情や恋を描いた青春群像劇。瑛太(23)田中麗奈(26)玉山鉄二(26)が出演する。

[2006年12月9日6時31分]

これでちょっとはスキー人口が戻るかな?
海猿のヒットで海保志願者が激増したということだし。

2006年12月 7日

医学会の声明と来週のカスペ

だいぶ放置気味になってしまいました・・・。
すごく忙しかったわけでは無いんですけど、最近普通に仕事をしているだけでもすごく疲れて。
どこかに出かける気力も無いので、毎日家にいる時間はひたすらご飯を作ってました。料理してるとイヤなことを考えないで済むような気がするんで。

さて、福島事件に関連して久々に動きがあったようで。
日本医学会が声明を発表しました。(全文はつづきのほうで)
もうすぐ公判が始まるのを受けてということですね。

そして・・・来週のカスペ!の予告HP。
『今、日本がおかしい! 現役ドクター大告発!アナタの命を救う病院教えますスペシャル』ですってよ・・・。
しかも主力テーマの一つがこれですよ。

○ペテン師産婦人科のひどさに涙  医師の都合によって患者に陣痛促進剤を渡している、などなど産婦人科の知られざるひどい実態を知らされ、あまりの残酷で許しがたい行為に、2児の母でもある北斗晶は涙ぐんでしまった。  さらに北斗は自分自身が初出産の際に体験した信じられないサイテー産婦人科についても激白!  ここでは、これまでの常識を打ち破り、安心して出産から出産後まで連携したケアをお願いできる病院を紹介する。

パネラーに陣痛促進剤による被害を考える会の方を呼んでのこういう話って、ちょっと時代遅れすぎませんかね。イマドキ促進剤を乱用する人が居るんだろうか。
あまりに残酷で許し難いのは、この番組作ってるフジテレビじゃないのかね・・・

平成18年12月6日

声明文

日本医学会長
高久 史麿

 本年2月,大野病院産婦人科医師が業務上過失致死と医師法第21条違反で逮捕されたことにつきまして,すでに多くの関連団体・学会から声明文・抗議文が提出されたことはご存じの方が多いと思います.
 事例は前置胎盤と術中に判明した予測困難な癒着胎盤が重なった事例であったと報告されています.この事例は担当医が懸命な努力をしたにもかかわらず医師不足や輸血用血液確保の困難性と地域における医療体制の不備が不幸な結果をもたらした不可抗力的事例であり,日本における医療の歪みの現れといわざるを得ません.地方や僻地では一人の医師が24時間365日体制で過酷な労働条件の中で日本の医療を支えています.過酷な医療環境の中で地域の医療に満身の努力をされ,患者側からも信望の厚かったといわれる医師が,このような不可抗力的事故で業務上過失致死として逮捕されたことは誠に遺憾であります.むしろ過酷な環境を放置し,体制整備に努力しなかった行政当局こそ,その非を問わなければならないでしょう.不可抗力ともいえる本事例で結果責任だけをもって犯罪行為として医療に介入することは決して好ましいと思いません.
 本事例は業務上過失致死のみならず医師法第21条違反にも問われております.この第21条は明治時代の医師法をほぼそのまま踏襲しており,犯罪の発見と公安の維持が目的であったといわれています.異状死の定義については平成6年の日本法医学会の異状死ガイドライン発表以来数多くの学会で論争が続いている問題であります.日本法医学会の「過失の有無に係わらず異状死として警察に届け出る」については,昨年9月にスタートした厚生労働省の医師法第21条の改正も視野に入れた「医療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を含め,本件逮捕以降,政府・厚生労働省・日本医師会・各学会等関連団体で検討に入ったばかりであり,異状死の定義も定かでなくコンセンサスの得られていない医師法第21条を根拠に逮捕することは,その妥当性に問題があるといわざるを得ません.過失の有無にかかわらず届け出なければ届出義務違反で逮捕される.届け出たら重大な医療過誤が疑われ,業務上過失致死罪に問われる.医師は八方塞がりであります.純然たる過失のない不可抗力であっても,たまたま重篤な合併症や死亡事例に遭遇したことで逮捕されるようでは必要な医療を提供できず,大きな国家的・国民的喪失となります.消極的・防御的医療にならざるを得ず,このような逮捕は萎縮医療を促進させ,医療の平等性・公平性のみならず医療・医学の発展そのものを阻害します.若い医師は事故の多い診療科の医師になることを敬遠しており,ますます医師は偏在することになります.
 日本医学会は異状死の問題に関する委員会でこの問題を検討しますが,今回,大野病院産婦人科医師の公判が近々に始まることを契機として以下の学会から同様の要望が出ていますので,これらの要望をまとめる形で日本医学会から声明を発します.


日本整形外科学会
日本周産期・新生児医学会
日本消化器外科学会
日本超音波医学会
日本小児神経学会