起訴になったことを知り、一気に力が抜けてしまいました。他の人から「力が入りすぎじゃないの」というような事を言われ、確かにそうなのかもとも思い、もうこの件についてブログを書くのはやめておこうかなと思ったりもしたのですが・・・
でもやっぱり思うところがたくさんあるので続けてしまいます。
昨日の読売新聞の記事で、こういうのがありました。(全文は長くなるので後に記載します。)
今回の件に対する医師たちの反対について、
「医療事故情報センター」(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「あまり情報がないまま、医者の逮捕はけしからんという意識に基づく行動という気はする」と指摘する。
情報がないまま反対していると思われるのだったら、是非情報を与えて下さい。
私たちが「逮捕・起訴もやむを得ない」と思えるような情報を下さい。私たちは全てのこういった事柄に反発している訳ではないのです。慈恵青戸病院や女子医大の事件に対してはこのような声はほとんど上がっていないはずです。
今回、出来る限りのことをした(と私は思う)産婦人科医が逮捕・起訴されたという認識により、おそらく勤務医の婦人科開業ラッシュが加速し、若手の産婦人科医が他科に転科し、産婦人科に進もうと思っていた多くの研修医が他科に変更することになるでしょう。
病院で働く産婦人科医が一人減る毎に、また分娩取り扱いを中止する病院が増えるでしょう。
読売の記事全文は下記。
それとは別に、ライブドアニュースに割と分かりやすい解説があったので転記しておきます。
加藤医師起訴 医療関係者反発の声 検察側は「無理な手術」強調
医療ミスか難治療か
大熊町の県立大野病院で帝王切開の手術を受けた女性(当時29歳)が死亡した医療過誤を巡り、執刀した産婦人科医師の加藤克彦容疑者(38)が10日、業務上過失致死と医師法違反の罪で起訴された。事故後1年2か月にわたり診療を続けてきた医師の逮捕は医師や関係団体に大きな衝撃を与え、同病院の産婦人科は11日から休診するなど地域医療への影響も出始めている。事件が投げかけた波紋を追った。
「地域医療を守る努力を重ねてきた加藤医師の尊厳を踏みにじる異例の事態」――。いわき市医師会の石井正三会長は8日、相馬郡、双葉郡医師会長とともにいわき市内で会見を開き、3医師会の連名で逮捕に抗議する声明を読み上げた。県内の医師約1500人で構成される「県保険医協会」(伊藤弦(ゆずる)理事長)も県警に「(逃亡や証拠隠滅の恐れがなく)逮捕は人権を無視した不当なもの」とする異例の抗議文を送付した。
県立大野病院で唯一の産婦人科医として年間約200件のお産を扱ってきた加藤容疑者の逮捕後、県内外の医師や関係団体が次々と反発する声を上げている。
神奈川県産科婦人科医会は「暴挙に対して強く抗議する」との声明を出し、産婦人科医を中心に県内外の医師19人が発起人となった「加藤医師を支援するグループ」は10日現在、全国の医師約800人の賛同を得て、逮捕に抗議するとともに募金活動を行っている。
こうした医師らの反応の背景には、医師不足による産婦人科医1人体制や緊急時の血液確保に時間を要する環境など、事故の要因として医師個人だけの責任に帰すべきではないと考えられる問題が指摘されている事情がある。また、子宮と胎盤が癒着する今回の症例は2万人に1人程度とされ、治療の難易度も高いことも「下手すると捕まると思うと、手術ができなくなる」(浜通りの産婦人科医)との心情を引き起こしているようだ。
一方、事故調査委員会が「癒着胎盤の無理なはく離」を事故の要因とし、医療ミスと認定しているのは明白な事実。「医療事故情報センター」(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「あまり情報がないまま、医者の逮捕はけしからんという意識に基づく行動という気はする」と指摘する。
片岡康夫・福島地検次席検事は10日、逮捕や起訴の理由について説明し、「はがせない胎盤を無理にはがして大量出血した」とした上で、「いちかばちかでやってもらっては困る。加藤医師の判断ミス」と明言。手術前の準備についても「大量出血した場合の(血液の)準備もなされていなかった」と指摘した。
加藤容疑者の弁護人によると、加藤容疑者は調べに対して「最善を尽くした」と供述し、自己の過失について否認している。公判では、過失の有無について弁護士8人による弁護団と捜査当局の主張が真っ向から対立すると見られる。判決の内容次第では、医師の産婦人科離れに拍車がかかる可能性もはらんでおり、全国の医療関係者がその行方を見守っている。
(2006年3月11日 読売新聞)
福島県の産婦人科医逮捕、広がる波紋
【PJニュース 03月12日】-ライブドア本社に東京地検の強制捜査が入ってから約1カ月後の2月18日、一人の産婦人科医が福島県警によって逮捕されて身柄を拘束された。罪状は業務上過失致死と医師法違反の疑い。さかのぼること1年2ケ月前の04年12月、同容疑者が執刀した帝王切開手術で、当時29歳の女性が胎盤剥離後に大量出血を起こして亡くなったことに関する複数の罪が問われたものだ。
医師の逮捕ということだけならば、残念ながら決して珍しいことではない。脱税を始め、暴行、わいせつ行為、麻薬所持などなど、目に余る違法行為が後を絶たない。しかし、医療行為そのものが罪に問われて逮捕されるということは、きわめて異例のことなのだ。1988年に鹿児島の医師が誤った造影剤を投与して患者2人を死亡させた罪により逮捕されて以来、14年間は医療過誤によって医師が逮捕されることはなかったが、02年に東京女子医大病院の心臓外科医、2003年に慈恵医大青戸病院の泌尿器科医がそれぞれ業務上過失致死容疑等で逮捕されたことはまだ記憶に新しい。
それでは今回、問題の産婦人科医(福島県立大野病院)はどうして逮捕されて身柄を拘束されなければならなかったのか。県警によると、同容疑者は胎盤が癒着していて大量出血の可能性があることを知りながら帝王切開・胎盤剥離を強行したことが問題だとしている。さらには「異状死」であるにもかかわらず24時間以内に警察署に届けなかったことは医師法違反であり、また同容疑者が容疑の一部を否認していて証拠隠滅の恐れがあったとも説明している。
ここで不思議に思うことは、すでに05年4月に同院に対する強制捜査・証拠書類の押収が行われており、また、福島県も事故調査を行ったうえで報告書を作成し、同容疑者の判断ミスを認めて遺族に謝罪した上で、6月には同容疑者を減給1カ月の懲戒処分、病院長を戒告処分としているということだ。また、同医師はその後も大野病院唯一の産婦人科医として献身的に勤務し続け、逮捕当日も診療中であったとのことである。このような状況の中、なぜ約1年も経過した現在、この医師の身柄を拘束しなければならなかったのだろうか。同容疑者の逮捕後、県立大野病院では同医師に代わる常勤医を確保することができず、入院者には転院先を紹介するとともに、外来は11日から休診することとになった。
このような状況の中、唐澤祥人東京都医師会会長と河北博文東京都病院協会会長は、3月3日、厚生労働省内の記者クラブにおいて記者会見を行って、声明 を発表。同医の上司である福島県立医大産婦人科教授は、起訴猶予の 陳情書を用意するとともに全国3000人以上の署名を集め、13日にもそれらを関係各位に提出する予定であった。
しかし、この動きを察知してか、これに先立つ3月10日、福島地検は業務上過失致死と医師法(異状死等届け出義務)違反の罪で同容疑者を福島地裁に起訴した。この決定を受けて日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会も直ちに声明 を発表した。
東京地検は4年前から同地検刑事部に医療専門捜査班を新たに設置して医療過誤事件の捜査に当たらせているが、そもそも高度な医療行為の内容に関わる是非を司法の判断に委ねるのが適正なのだろうか。既成事実を積み重ねて判例を築き上げてしまう前に十分な議論を尽くしていく必要があるように思われる。【了】